「営業」というもの

雪の降り積もる福島県の会津

深夜の11時に中学3年生のお子さんを持つご家庭におじゃましてしまった私。

当初(8時間前)の目的は教材を販売することでしたが、

長距離の、しかも全く気が抜けない運転の疲れのため、そんなことはもうどうでもよくなっていました。

安全な帰り道を聞くだけのつもりだったのが、お茶どころか食事まで出していただき、

(みそラーメンでした。今でも覚えてます、すっごくおいしかった・・・。)

挙げ句の果てには、

「今から帰るのは危険だから、今日は泊まって行きなさい、明日道を教えてあげるから」

ということでお言葉に甘えてしまいました。

食事の後、親父さんにお酒を勧められ、本当は私は全くアルコールがダメなんですが、

ここで断ったらあまりにも親父さんに申し訳ない!と思い、飲めないお酒を飲めるふりして

ごくごく飲んでしまいました。

そして、飲みながら自分の大学時代の塾講師のアルバイトのこと、

就職予定だった塾が火事で焼けてしまったこと、

実家で食堂をやっている両親のことなど、・・・・時間を忘れてずいぶん話したと思います。

「ところでせっかく苦労してきたんだから、教材の話もしなさいよ!」

と、お母様に言われたのですが、正直言って慣れないアルコールのためはげしいめまいに見舞われ、

細かい内容がすっかり飛んでしまい、

「いや、とにかくいい教材なんですう。」を連呼するだけという、最低な営業マンでした。

(たしかに、いい教材でしたけどね。今あったら塾で使いたいくらいです。

現在私がはまっている自学自習が効率的にできるシステムでした。)

中学3年生のお子さんや、小学生の弟さんともすっかり仲良くなり、その日は彼らの部屋に寝かせてもらいました。

長距離運転の疲れと、飲み慣れない酒のおかげで翌日はお昼まで寝てしまいました。(ひとんちで・・)

当然親父さんは仕事、お子さんは学校に行っていませんでした。

お母様に帰り道を教わり、深々とお礼をして帰ろうと思った矢先、・・・・・

「石田さん、これ、お父さんが・・・・・・。」

といってお母様が私に手渡したのは、茶封筒に入った契約書でした。

酔っていてあまり記憶がないのですが、いちおうひととおりの説明をして、

しっかり契約書まで渡していたらしいのです。(何百回も繰り返して練習した成果?)

契約書には、親父さんの名前と住所・印鑑のみが押してありました。

「どれを買っていいか分からないから、とりあえず石田さんに任せるって・・・・・。子どももやるって言ってるし・・・。」

お母様の前で思わず泣き崩れてしまいました。

わずか20数年の人生でしたが、ここまで感動したことはありませんでした。

言葉が見つからない、というかとにかくしゃべろうとすると涙が出てしまって全然しゃべれないんです。

宇都宮営業所にいたとき、トップセールスマンの方に同行させてもらい、帰りに一緒に食事をしたときに、

「営業は決して商品を売ってはいけない、自分を売ることだ!」

「相手のことを第一に考え、どうすればお客さんの困っていることが解決できるかを自分のことのように真剣に考え、

そして最善の解決策を提案するのが営業の仕事だ!」

ということを何度も言われていたのですが、少なくとも前半部分の意味がやっと分かりました。

その後、このご家庭とは親しいおつきあいをさせていただきました。

会津方面のアポが取れると、みんなが(あまりの遠さに)いやがるのですが、率先して私が受け取り、

そのたびにおじゃまして鍋をごちそうになったりしてました。

宇都宮に戻ることになったときも、ご挨拶に伺ったのですがホントに分かれるのがつらかったです。

このご家族のおかげでがんばれたと言っても過言ではありません。

とにかく会津の人はあたたかくていい人達でした。


宇都宮に帰ってから、一向に売れなくなり、給料0円が2ヶ月続いてしまい、

さすがに食べていけなくなってやめてしまいましたが、

このわずか2年間の営業生活は、私のその後の人生の大きなバックボーンとなりました。

どんなに仕事がつらくても、イヤなことがあっても、

「あのころに比べれば全然天国のようだ!」と思えてしまいます。

わずか2年間でしたが、雪の中ワゴン車で団地の近くまで運ばれ、

「売れるまで帰ってくるな!」と置いてきぼりにされ、寒さをしのぐために電話ボックスの中で夜を過ごしたり、

片道分のガソリン代しか財布に残っていない状態で現地に行き、

売れずに帰って途中でガス欠・・・・、電話代すらなく、今市から宇都宮まで歩いて帰ってきたり・・・。

数え切れないくらいのいろいろなことがありました。

あまりにも悲惨すぎてここではかけないことばかりですが・・・。

でも、このような厳しい営業の世界に2年間だけでもいられたことを誇りに思います。

当時お世話になった上司の方々には本当に感謝しております。

あなた方のおかげで今の私がいます。









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haruka

はじめまして。
営業職に就いております。
面白おかしく、そして今回の内容は涙が止まりません。
石田せんせーの過去トピ、これから読ませていただきます。
そして、こちらのブログ会員登録しようと思います。
これからも宜しくお願い致します。
by haruka (2014-10-25 23:39) 

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